学校の階段

ミッション系の高校だったためか掃除には厳しくて,するとそういう環境に過剰適応した一部の子供が,つまり僕のことですが,やたら掃除に気合いを入れるのでした.掃除をするうちに石の廊下を拭いてると気持ちがいいことに気づいてね,膝をついたり手で撫でたときの湿ったひんやりとした感じや人肌のような滑らかなテクスチャが良かったり,普段足の裏で踏んでる場所に別の部位で触れるのが不思議と落ち着いたり,好きだったな.掃除はともかく学校の廊下が嫌いな子供ってあまりいないんじゃないかしら.毎日歩く廊下の落書きや張り紙の破れや壊れた非常ボタンはお気に入りの風景になってて,学年が変わって別の廊下を通らねばならなくなったときのあの当初の違和感は,そういうところからくるんじゃないかな.それで「学校の階段」(櫂末高彰)では子供たちが今にも廊下にキスしそうな勢いで校内掃除してるのが良くってね.いつもはばたばた校内を走り回るのが彼らの部活ですが,外が暗い時間になると廊下の肌理をなでて,やさしく愛してやってる.

階段が優れた遊具であることは小さい頃にマンションや学校の階段を走り回った記憶が証明していると思われますが,もう少し言葉にしておくと,それは階層の違う世界(たとえば別の学年の廊下)へ侵入するおもしろさと,段差で汗をかくことの快楽,ヘアピンで目の回る感じなどがごっちゃになったものです.階段に限らず校内を走り回ることのおもしろさは侵入するところにあってね,たとえば階段部のメンバのなかで僕のお気に入りは天ヶ崎さんであって,なにせ彼女は校内ラリーの最短ルートとしてトイレの窓を抜ける道を開拓した人だから.

先週の日曜日のお昼,カレー屋で京都新聞を読んでたら京都駅の大階段駈け上がり大会なるものがあったことを伝えていました.2月19日付けの新聞です.大階段といえばガメラ3やネギま!の京都編やハプロケに登場し,アルティメットガールには出てこないというご存じJR京都駅の名所.ちょうど「学校の階段」を読み終えたところだったので巡り合わせを感じたのでした.気になったのが大階段の数が171段であると書かれていたことで,なんとなくカタログの引き写しに見えたので違うんじゃないかと思ってその後すぐ自分で調べに行きました.

結論から先に言いますと,頂上の展望スペース「大空広場」から大階段下の「室町小路広場」までの段数は199段で,171段というのは伊勢丹11階までの段数のことです.構成は次のとおり.

▼断面図: http://www.kyoto-station-building.co.jp/eventspace/main.html

▼段数の構成:
[大空広場]
14段
踊り場
14段
[11階] http://wjr-isetan.com/kyoto/floorguide/floor_11f.html
12段
踊り場
11段
[10階] http://wjr-isetan.com/kyoto/floorguide/floor_10f.html
12段
踊り場
11段
[9階] http://wjr-isetan.com/kyoto/floorguide/floor_9f.html
13段
踊り場
12段
[8階] http://wjr-isetan.com/kyoto/floorguide/floor_8f.html
13段
踊り場
12段
[7階] http://wjr-isetan.com/kyoto/floorguide/floor_7f.html
13段
踊り場
12段
[6階] http://wjr-isetan.com/kyoto/floorguide/floor_6f.html
13段
踊り場
12段
[5階] http://wjr-isetan.com/kyoto/floorguide/floor_5f.html
13段
踊り場
12段
[4階 : 室町小路広場] http://wjr-isetan.com/kyoto/floorguide/floor_4f.html

▼コース解説
 伊勢丹11階から大空広場までの特別階段はコースが斜めであり,また階段の幅が半分になって危ないので,上記駈け上がり大会では利用されていないということでしょう.また,9階から11階までの間は階段の真ん中に伊勢丹への入り口が開いているため,コースが二手に分かれています.

大会っていうのはどうも明るすぎて階段部とは正反対の位置にあります.中村ちづるさんが言うところの「コソコソやるのがお好きなようね」という悪口は正しいから悪口なのであって,屋上の人から見えない場所でごはん食べてる階段部の連中を見れば思い出されるのはやはり佐祐理さんと舞と祐一君がご飯食べてた階段のどん詰まりであって,ちづるさん同様Kanonでは生徒会であるところの久瀬君が言いそうなことでもあります.人のこない寂しい場所で隠れて集まんなきゃなんないそれを明るい活動であるとはちょっと呼べない.もちろん,人の活動は明るいものでなくてはならないということもまたないです.

そんなわけで,僕も日が暮れてから大階段を使って階段部が言うところのショットを計測しました.お天道様の下でやるもんじゃあるめぇ.あと広い階段を使うもんでもねぇ.実は大階段の脇にあるエスカレーターと並んで,3メートル程の幅で同じ段数の階段が併走しています.こちらの階段はよく出来ていて,室町小路広場から大空広場までまっすぐ上ることが出来るようになっています.コースは室町小路広場の一番西端の柱から,大空広場の最奥,ヘリポートのフェンスまで,登って降りての往復です.時計を持ってなかったので京都タワーのダイソーでキッチンタイマーを買ってきました.そして,よーい,どん.はじめは快調に一段飛ばしで登りましたが,三分の一にも満たないところでおっちゃん息切れ.足が上がらなくなってよろよろとフェンスまでたどり着きました.フェンスにタッチして下りは動かなくなった足に鞭を打ちつつ,転んで落ちないようにしながらなんとか.ひー.結果,登り2分27秒下り2分22秒の計4分49秒でした.挑戦者お待ちしております.

天ヶ崎さんのトイレで思い出しましたので,せっかくだから京都駅にある隠しトイレの位置についてお教えしたいと思います.京都駅の2階には改札内の他にトイレの案内がありません.実際は改札外にもひとつトイレがあるのですが,矢印などの誘導がないため気づかれにくいです.南北自由通路の駅ビルインフォメーション横にミスタードーナツとカフェデュモンドの並んでいるオープンカフェスペースがあって,実はこの奥にトイレがあるのです.お店で聞いた人かカフェの西端に座ったことのある人しか知らないんじゃないかなぁ,というわけで,京都駅の2階で大変なことになってしまった人は,今日の僕の言葉を思い出してください.いいですか,オープンカフェの奥です.

疏水太郎