ベステンダンク

ゲームセンターでフィクションの男の子や女の子と一緒に過ごそうって時に,そこに音楽が流れてると有り難いのは,曲とリズムを合わせていると僕と先方との全感覚が重なってゆくからで,それはコンパネや画面を叩いたり,声を出したりも伴うもので.対面会話では互いの声や仕草のテンポが同調しているときに話が心地よいと思えるものですが,人工物との対話処理が難しい現状において,音楽の力を借りて僕らが彼ら彼女らと同調できるようにしたというのは,これまでにシューティングゲームなどで経験されてきた同期的音楽がストーリーへ引き込む力の,キャラクターに対する素敵な応用であると思います.IDOLM@STER についてはそんなとこでハーイタッチ.

また,クイズゲームというのはおよそ反射であるので,これも出題と回答の繰り返しの中にリズムが出てきます.イントロクイズは音楽とクイズが合わさったもので,「きらめきスターロード」の彼女らとは重なり合ってた時間が長かったように思います.ヘッドホンプラグ付きの筐体だと特に没入できました.(久々に探してみたら,みさこっちのページ,まだあったのね.なつかしいわ.) クイズだったら XboxのN.U.D.E.@ の音声認識も良くて,彼女が出すクイズに対してこちらが音声で答えられるのが気持ちよかった.声を出すっていうのはビートです.

「この声は小さすぎて/君の元までは届かない/たとえそれを知っていても/叫ばずにいられない」(高野寛),なんてね.

音声認識を使うとすれば,それが僕と彼ら彼女らとの間にあるリズムやビートに組み込まれるような情熱的なものであってほしいと思います.また一方で,話しかけることすら恥ずかしかったりうまくゆかないところからはじめるという水姫んとこの話も恋愛的でいいんじゃないかと.今の対話処理の限界を考えると僕らは相手に話しかけない方が良くて,その突き詰めたところに彼ら彼女らと対峙するときの気恥ずかしさが導入されているのかもしれないです.

(参考:ezバーチャルトーク関連.トップページからたどれなかったりするので,今はもうサービスしてないのかも.
・音声恋愛シミュレーションゲーム「キミに告白!」
 彼女らは横浜育ちなので方言にはついていけないというアドヴァイスが嬉しいです.
・音声認識を利用した癒し系ショートストーリー「いやしのナイトカクテル」
 マスターと山下君がいいわ.)

「らき☆すた 萌えドリル」は良さげなので僕が買います.うちにあるのはこのためのDSだったのか.

あと音声認識を用いた同調的な会話といえば「恋する英会話 ラブモード」とか「デカボイス」とか.どちらも未体験ですが,思い出されるのはダ・カーポのファンブックに付いてくるバーチャルHドラマCDでして,そこでは彼女らが話しかけてくる言葉に対して僕は自由に返事をすることができます.いちおう台本があって彼女らの発話の間隔は台本に沿って僕の台詞分の長さだけ空けられています.ここでは相手とリズムを共有してゆくという点に関して,声に対してクリックする非対称よりも声の応酬のほうがなめらかに感じられるものだと思いました.

彼ら彼女らと対話する手法には流行の波があって,一般にも入出力中心の世界と内的処理の世界とは交互に発展するもので,今はコンテンツやセンシング技術のコストが割安なためかテクスチャの豊富な音楽や絵や文章とその組み合わせのリズムとで体感させるメディア処理が盛り上がっていますが,そうだとすると,割安なものというのはそのうち手が尽きますので,記号処理的な手法へ発展的に帰ってゆくことが必要とされそうです.

まぁともかくも,ただ今はね,触れ合うほどの歌声の世界にベステンダンクという気分.

疏水太郎