静止するもの

イカルス憑きの少年が,
ソーラーパネルの羽根しょって,大気圏から飛び出した.
翼の電気のシグナルで,少年は告げる.

アテンションプリーズ,アテンションプリーズ,
この飛翔体はまもなく永遠に到着いたします.
前方をごらんください.
僕はいつまでも地球へ落下し続けます,
僕が落下しただけ地球は僕から離れてゆきます,
僕はいつまでも宇宙を回り続けます,
いつまでもあなたの空の高くに輝いています.

墜落する少年のさだめがロケットと釣り合うとき,
宇宙時代のイカルスは高度36,000キロメートルの星となった.

疏水太郎