ある日,爆弾がおちてきて(改)

表題作について端的にまとめ直し.心臓のために服用するニトログリセリンや,病で破裂しそうな胸の様子であるとか,広﨑という自分の名字,ひかりという名前,ちょっと気になる男の子の長島という名字,彼のことを気になるがゆえの胸のどきどきなどから導かれる涙交じりの諧謔として,広崎ひかりは爆弾というものを連想するのではないか,と想像させるお話で,昔ちょっと気になってた人の訃報を聞いた時に頭を駆けめぐる,がつんとした,無茶苦茶の,瞬間のイメージの渦を,なんとか理解できそうなお話として言葉を用いて引き延ばして描くならば,想像の働く場そのものを描く必要があって,それは喚起力のある,因縁めいた言葉で構成されることになるのでした.奇抜だとは思うのですが,広﨑,長島,ピカリ,という言葉なしには有り得なさそうなお話だと思います.

疏水太郎