第六夜 ネノネノコモネルネノコクノクニ

ねずみ旦那

今日は一本釣りの旦那が何本も使う大仕掛けでした.
獲物は人間の女の子です.

遠い地層の彼方で釣り糸に力がかかると,
子分どもが勢いよく糸を曳きました.

落ちてきたのはたいそう可愛らしいお姫様でした.
泣いているお姫様の顔を,旦那はやわらかいお腹で拭いてやりながら言いました.

「怖かったかもしれませんが,お怪我はないでしょう?
 あっしは一本釣りの旦那.危険な投網は使いません.」

四葉が自分の体を調べると,たしかにどこにも痛いところはありませんでした.

「どうもありがとう,旦那さん.」
「いやいや,今日のあっしは姫様をさらうのが仕事.お礼を言っちゃいけません.」
「それじゃあ,ここはどこですか.」
「世界の根元の大鼠,その子の創ったネノネノクニ.
 根の子の子も寝る子の刻の国,つづめてネノクニと申します.」

(Zaurus MI-E21 + PrismPocket, 2003/4/12)

第五夜 鼠の浄土

joudo

目が覚めたとき,四葉は暗い穴の中を落ちていました.

釣り糸を曳くのは船鼠の群れです.
不始末をしたデッキのようにぬめりけのある斜面を
うねったりひねったり恐ろしい速度で駆け抜けるものですから,
四葉のほうは命がいくつあっても足りませんでした.

(Zaurus MI-E21 + PrismPocket, 2003/4/8)

第四夜 置き手紙

odawara

釣り針は手紙を残してゆきました.記された地霊文字は次のように読めます.

”四葉さまをわれらの姫としてお迎えした.
                      ネノクニの王”

「お前ら,ふざけとる場合か.
 ネノクニだかウシノクニだか知らねぇが,さっさと助けにゆくぞ.」

オオヤリはああ見えて,ひと突きで牛も倒せるのです.

(Zaurus MI-E21 + PrismPocket, 2003/4/8)

第二夜 喧嘩の日

ame

水たまりの向こうの国から,釣り針が四葉を攫おうとしています.
(きっと童話に出てくるウラガリ国の針です.)

いつもならオオヤリコヤリが命をかけて守りますが,
彼らとはさっき喧嘩をしてしまいました.

(Zaurus MI-E21 + PrismPocket, 2003/4/5)