私のデフォルト推論

今日読みかけた小説の冒頭に次のような文章があったので喝采をあげた.「私は近頃死んだ母が生き返ってきたので恐縮している.私がだんだん母に似てきたのだ.」ここ数日ちょうどよく似たことを考えていたため,巡り合わせというものを面白く感じた.

それで楽しく読み進めていると,1ページほど先に今度はこのようにあった.「母は私をオメカケにしたがっていた.」・・・なんと,私,というのは男でなく女だったのである.たいへん驚いた.

普通は勘違いしないところだろうけど,デフォルトというのは読み手の昨日今日の出来事にも左右されるものでさ.ついでにいうと,直前に同じ作者の私=男な話を読んでいた.

それはそうと,男の子は母親似で女の子は父親似という俗信は,性別で縦割りにしようとする向きにはカウンターとして効いていて,なるほど,世の中よく出来たものであると思う.

疏水太郎