さくらの境(1)(2)

大学入り立ての頃,先輩に竹本泉を勧められたときには,男の子と女の子がなんかよく抱き合ってるのがいいんだと聞かされていたのですが,そのころの僕はそれがなぜいいことなのだかよく判ってませんでした.今にして思えば竹本泉的には昔からずっと,人はべたべたぺたぺたしていたいよね,ということであって,女の子同士に限らず一般に男の子同士であれこんな風にしていたいという話なのだと思われます.

それはただ当たり前のことであってほしいと望まれたのでした.家になんか帰りたくなくて毎週のようにお泊まりしていた頃のこと,僕はといえば二十歳を過ぎてもまだちゅーしたり一緒にお風呂入ったりしたくなる風に身体が出来ていなかったのでそれはしなかったにしても,友達の背中や肩にひよこみたいにぴったりとくっついて回っていたものでした.学部時代,人間らしい目にあった一番のことは,その頃,甘えさせてもらったことだったと思い出されます.

疏水太郎