D.C.S.S. #10

眠れない夜に子供部屋から逃げ出して来たら,リビングではいつもと違う静かな空気が流れていて,テレビの洋画を父さん母さんふたりで見てた.僕もふたりの間にはさまって見ることになったけど,なんだか不思議だったあの空気は今にして思えば洋画が全く判らなかったからじゃなく,それがふたりだけのための時間だったからだ.

彼女にしても自分の目の前で流れてる時間以外はよく判らなくて,親のほうが勝手にあれこれ心配して,子供が人に迷惑かけたのは自分らが構ってやってなかったからじゃないか,まぁヤンママヤンパパだからいちゃいちゃしたい盛りではあるけど,どうも後ろめたくて,だから今日の夕飯はごちそうにしたよ,なんて言われても子供のほうとしては首をかしげるだけで,理由は判らないけどおいしいからそれで良くて.そうやって判らないながらも二つの世代の時の流れはときに撚り合って,僕みたいに二十年以上経ってからようやく思い出されたりするのです.

いい思い出をありがとう.

疏水太郎